Vol.11

元箱根磨崖仏(地蔵菩薩座像)撮影:遠藤桂

箱根に住みはじめて10ヶ月。

子供の頃、家族とたびたび訪れた地でもありますが、観光でくる箱根とは、ちがった面が見えはじめてきました。
私は「よそもの」と「住民」と「箱根写真美術館副館長」の視点で箱根を見つめることができ、良くも悪くも、いろんな顔を発見しはじめたのです。

箱根を嫌う人はまずいないにも関わらず、年々、客足は減少しています。素晴らしい自然環境、温泉に恵まれ、交通の便もよく、見どころの多い箱根。この地は発展を続け、たくさんの方に愛され続けるために今、見直す時が来ていると思います。

箱根はかつて地獄といわれていたそうです。

日本を東西に分ける箱根山、鉄道もなく、自分の足で登る険しい山道。疲れ果てて登り切ったとき、山肌から吹き出す硫黄煙、力尽きた人々も多くいたでしょう。その情景はまさに地獄だったのかもしれません。

それから時代をつくった多くの人々がこの山を通り、温泉を発見し、湯治場として栄え、ひとの集まる場所に商売がはじまり賑わい、多くの文人たちに愛されてきました。 明治の建築が今もその姿を残し、寺や老舗旅館には襖絵や書が多く残され、文人たちの足跡ともいえる碑があり、鎌倉時代に彫られた磨崖仏があります。

 これほどの歴史のある土地でありながら、「箱根=文化に触れる」という感覚はあまり一般に浸透していないように思われます。箱根の歴史、文化財に関しては箱根町立郷土資料館に多くの資料があり、冊子、本もおおく出版されていますが、あまり観光向けとは言えないのも原因といえるようです。

 今、箱根観光協会主催の冬の箱根誘客運動「HOTする箱根」のひとつとして、箱根町の指定文化財を公開していこうという動きがあります。

 第一回目の2004年3月には、箱根文化財の写真展を開催する予定です。(詳細未定。決定次第、箱根写真美術館公式ホームページにてお知らせいたします)

 この写真展では箱根で生まれ育ち、在住の写真家として、遠藤桂氏が撮影の依頼を受け、私も撮影に立ち会い、貴重な文化財を拝見する機会を持つことができました。そこで出会った文化財は素晴らしく、(知識の薄い私でも)楽しめるもので、豊富さに驚きました。

早雲寺本堂襖絵(非公開文化財) 撮影:遠藤桂

 今まで「住民」でありながら知ろうとしなかった自分を反省すると同時に、「よそもの(つまり観光客と同じ視点を持つ)」である私は、お客様に対して"きっかけ"を用意していなかった事に対して、非難する気持ちになりました。

 観光にくる方は楽しむのが目的であり、研究することではないのですから、こちらが120%楽しんで頂けるためのツールをいくつも準備して差し出さなければいけないと感じているのです。

 その土地を愛する人たちが、その良さをもっと知ってもらおうとする「おもてなしの心」が、発展を続ける観光地の核となるのではないかな、と思います。

 この「HOTする箱根」箱根の文化に触れてもらおう、新たな魅力を知ってもらおう、という誘客活動はとても大事なことです。ご来場された人々が、新たな発見にわくわくしてくれる写真展になればいいなと思っています。そして冬の箱根になくてはならないものに育てていきたいと思います。

 私はまだまだ箱根初心者、勉強不足。「よそもの」の視点を持ち続けながら活動に参加できること、嬉しく思います。ここに小さな根を降ろし、いつか大きな根を張りたい、そんな気持ちがふつふつと沸き上がってきたようです。



※箱根文化財の写真展の開催日程、会場は決定次第、

   箱根写真美術館公式ホームページ www.hmop.com/news.html にてお知らせします。
   (2004年3月、会場は箱根彫刻の森美術館を予定)

たくさんのご来場、心よりお待ち申し上げます。

文・詠

箱根写真美術館が出来上がるまでの様子

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