Vol.15
 写真をはじめて撮ったのはいつだったか。

はじめてカメラに触ったのは5歳くらいだったと思います。

父が持っていた、大きくて重たい真っ黒のカメラは、レンズも取付け式、ストロボも大きいのがガシャンと飛び出すようなものでした。

あのカメラは一眼レフだったのかしら?

すごいカメラを構える父に「すごいねえ」といったら、父は笑って「バカチョンだよ」と言っていました。

※「バカチョン」とは差別用語であり、かつカメラに対しても失礼と思い直し、今は使いませんがその当時はそんな意識は浸透していなかったのです。

 いつのまにかその重たいカメラは姿を消し、最新のシルバーで軽い(といっても今ではかなり重たい)全自動カメラがやってきました。

ズームはボタンひとつ、暗い所ではフラッシュも自動に光る!

かっこよくて、自分でも撮れることが嬉しくて、家族旅行の度に兄妹で奪い合って撮ったのを覚えています。

その後、「フィルム付きカメラ」が登場し、大流行しました。

私が高校生の頃は、毎日カメラを持ち歩き、明日も来るはずの教室で、毎日会える友人と、お昼ご飯、お昼休み、放課後、いつでもどこでも撮っていました。

しかも皆が一個ずつカメラを持っているのですから、写真の量は膨大です。

その頃プリクラも登場し、それにも夢中になっていました。

大して時間も経っていないのに「あの時は若かったな」なんて気持ちでいましたが、今では却ってあの時の写真を面白いなあ、と思います。

あの時の写真は、記念撮影でもなく、特別な日でもなく、日常のこと、楽しいというその瞬間が切り取られ、何気ない日が残るというのは、気取りがなく面白いものです。

何故あんなに「撮りまくった」のか、意識的ではないにせよ、「今」がすぐに終わってしまうような焦燥感と、その後の不安や拒否感などがあったのかもしれません。

MAMIYAFLEXの二眼レフ

 

Nikomat一眼レフ

 そして再び写真を意識して撮ったのは、初めて一人で外国に行った時でした。

初めて一眼レフを使い、アングルを自分で決め、自分で光をみてシャッタースピードを変え、ピントを合わせてシャッターを切る。

私は自分で見た風景、太陽が川面に写り反射する様、古い建物に夕陽が溶け込む感じ、夜から朝に変わる空の色、目新しいその風景に感動しました。

風景や光は一瞬で変わってしまうのに、慣れない操作でまごついて、シャッターを押すまでは、時間との戦いです。

日本にいる両親や友人にも見せたい、という一心でした。

その真剣さが我ながら新鮮で、いっぱしのカメラマンになったつもりで必死に写真を撮っていました。

写真の出来に、私は大満足でした。

下手でしたが、とにかく色が綺麗だったのです。

私が残したかったものは、光やその色、向こうで感じた空気の色でした。

 今まで自分にとって写真はただの写真でした。

写真に携わるようになり、写真に対する新しい発見があり、自分の中での意識がどんどん変化していきます。

写真はそのものの形状を忠実に残す記録としての重要な役割があります。自然の美しさ、生命の美しさ、人の生み出すものの美しさ、自分の感動するものを撮り続け、伝えようとする写真家がいます。
何かを訴えるために撮り続ける写真家がいます。あらゆる技術を用いてつくり出す二次元の世界もあります。

そして家族や友人と大切な時間を共有した証として、歴史の記録として残す写真もあります。

実際には見ることができないもの、会うことのできない人を知ることができるのです。

カメラは素晴らしい発明の賜物ですが、道具にすぎません。

カメラという機械をつかってシャッターを押すだけのはずが、撮る人によって出来上がりは違います。
同じ花を見ても感動する部分は違うはずです。花の雌しべや雄しべの形状に感動する人もいれば、花の群集に美しさを見い出す人もいます。そしてそれぞれの感動が表現できたら写真はもっと楽しくなると思うのです。


今夏、箱根写真美術館では写真教室を開講します。

当館の基本理念に基づき、「五感をつかって」感じてもらいたい、「写真を通して表現」することを楽しんでも

らいたい、そこから「新しい才能の発掘」「縁による心の交流」が生まれてくるだろう、そうあって欲しいという思いから始まりました。

初心者の方でも、もっと楽しく綺麗に写真が撮れるよう、撮影の基本や、ちょっとしたコツをプロとして活躍する4名の講師が伝授します。もっと写真を好きになってもらうための一日日帰り講座です。

箱根の自然をゆっくり感じながら、写真レッスンを受ける、そんな休日の過ごし方も提案したいと思います。

詳細は箱根写真美術館のホームページに公開しておりますので、どうぞご覧下さい。

※フジフィルム系サイト『PHOTO MORE』にも掲載中です。

http://www.fujifilm.co.jp/photomore/pickup/index.html

                                            

                                                      文・写真/ 詠

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