Vol.24
 今、美術館には居候がいます。

一時お預かりしている金魚です。

育て方も知らない私は、色々と質問をしながら

「ちゃんと育てるけど、何かあっても大目に見て(笑)」と冗談まじりに言っていました。

金魚の名前は、わかりません。

「めだか」のような小さなピンク色のお魚です。

1月半ばからお預かりしているこの金魚。

予感的中。

早くも恐ろしい目に遭ってしまったのです。

箱根の冬は厳しく、室内でも暖房を切る夜中には氷点下になります。

それだけでも、金魚にとっては大きな試練だというのに。。。

ある日、水槽のお水が汚れてきたことに気づき、入れ替えをすることにしました。

子供の頃、水道の水は一晩汲み置きをしたものを使っていたような記憶がありました。

さきほども書いた通り、箱根は夜中に温度が下がります。

水道が凍結することもあるため、水道の水は少し出したままにしておきます。

その水が浴槽内に張ってありました。

私は「これはいい考えだ」とばかりに水槽の金魚を浴槽内に放ったのです。

金魚は今までの狭い水槽内から、大きな海へと飛び立つように、勢い良く、気持ち良さそうに泳いでいったのです。

「やはり、広いところがよかったんだ」と得意満面も束の間、、、、

勢い良く泳ぎだしたはずの金魚は、突然ゆっくりと体が傾きだしたのです。

「?!」

焦った私は浴槽内に洗面器を突っ込み、慌てて救出しようとしました。

「×××!!」

ちょっと考えれば当然だったのですが、凍結防止に出した水の冷たいこと、冷たいこと!!手が凍りそうでした。

浴槽内の水を抜こうとしても、金魚は流れてしまうだろうし、浴槽めいっぱい張っている氷水に手を突っ込んで、金魚をすくおうとしても、なかなか上手くいきません。

金魚は横を向いて、ゆら〜りと水中に漂っていますし、私は綺麗なお水に取り替えてあげたかった(しかも広い水槽で泳がせてあげたかった)だけなのに!

という気持ちに泣きそうになっていました。

ようやく、びちょびちょになりつつ、金魚を救い出し、小さなコップ1杯分残っていた以前の汚れた水に戻しました。

3匹中、1匹は浴槽には投げ込まれず、無事でした。

残る2匹はコップの底に沈んでいます。

「ああ、殺してしまった」

私は、ものすごい罪悪感と哀しみと、なんてこった。という気持ちが、ぐるぐるしていました。

しかし、せめてお墓を作ってあげなくては。。。ということまで考えていました。

どうしていいものか、途方にくれながら1匹の元気な金魚と2匹の死骸の入った

小さなコップを持っていました。

生き返ってくれないかしら?とコップを置いて、じっと観察してみました。

動いた!かと思いきや、水の浮力に身を任せているだけだったり…。

すぐに埋める気力もなく、コップをじっと見つめていました。

こんなに小さな体にあの冷たさは、心臓麻痺を起こすのも当然です。

心臓なんてきっと、1-2mmしかないはずなのですから。

やるせない気持ちでしたが、ふと思いついてヒーターの前で暖めてみることにしました。

ダメもとってやつです。

しばらく、ヒーターの前にコップを置き、奇跡が起こらないかしらと見つめていました。

なんとなく自分が馬鹿らしい気持ちになってきたとき、1匹の口がパクパクっと動いたように見えたのです!

「もう一度、もう一度動いて見せて!」と食い入るように見つめます。

やっぱり、口が動きました。まだ、体は横向きに沈んでいます。

「よかった。生き返るかもしれない」

希望が出てきて、ヒーターに近づけてみたりしました。

しばらく見ていても、口以外には変わりありません。

でも、確実に生きています。

私は子供の頃、同じような経験をしたのを思い出しました。

幼稚園くらいのころ、赤ちゃんカタツムリを20匹くらい集めて飼っていた事があります。

虫かごに入れた5mmくらいのカタツムリ。ちゃんと背中に小さな殻を背負っていて、

かわいかったのです。

ある日、「お散歩」に連れて行こうと思い立ち、自宅の前の道路にカタツムリを放したのです。歩くのは遅いカタツムリだから、集めるのも簡単と思ってのことです。

が、そこは普通の道路でした。

車がきたのです。

「カタツムリ!!」と思いましたが、集めるには数が多すぎて間に合いません。

自分は脇によけ、「カタツムリを踏まないで」と祈りながら車が通り過ぎるのを待ちました。

が、歩くのが遅いカタツムリは避けられなかったのです。

ほとんどがひき殺されました。

善かれと思ってしたことが、悲しい事態を生んでしまった、あの気持ち。

今回の事件ではっきりと思い出しました。

見ているのが悲しくなってきたので、とりあえずヒーターにお任せし、気を紛らわすため、荒れ果てた浴室内を片付けることにしました。

何分くらい経ったでしょうか。

恐る恐る金魚を見にいってみました。

すると…

3匹とも元気に所狭しと泳ぎ回っているではないですか!!

よかったあ〜。

本当によかった。

突然の冷たさにショックを受けた金魚は仮死状態になっていたのです。

ああ、こんな小さい体で、なんて逞しいんでしょう!

それからは、温度管理に気をつけヒーターでお水が冷えすぎないようにしたり、水替えも汲み置きの水を少し暖めるようにしたり、ということで、金魚は3匹とも元気に暮らしています。

春が近づき、暖かい陽だまりの中にある、か細い体の小さな命たち。

あの事件以来、金魚が泳いでいたり、餌を食べたりする姿を見ていると、「命」が動いているように見えてくるのです。

本当に考えなしに辛い体験をさせてしまったこと、今思うとお恥ずかしい話です。

子供の頃から何一つ変わっていない自分も、恥ずかしい。

金魚が生還してくれたことで、笑い話にもできるというもの。

ありがとう、金魚くん。

そしてもうすぐ、春。金魚くんたちにも待ちに待った春です。

芽吹き、花々が咲き始めるのが楽しみです。

今年も、「箱根の自然で学べる、写真の撮り方教室」はじまります!

2005年は通年開講。テーマは「旅して箱根。四季を撮ろう!」です。

第一回目は4月3日(日)。桜の撮影に挑戦です。

詳細はホームページから! http://www.hmop.com/school_05.html

復活(生還!)した金魚たち

金魚の持ち主でもある硝子屋PRATO PINO作の金魚鉢 (PRATO PINOさん、すみません〜〜)

                                          文と写真/詠

箱根写真美術館が出来上がるまでの様子

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