僕は2日前にも幻の雪に出くわしていた。同じく乗合タクシーの中だったが、西アフリカの日差しと土埃の中で幻は始まった。車窓にほわりほわりと綿雪が降ってきた。不思議な気持のままにしばらく走ると、道の両側に広大な綿花畑が出現した。そこから綿花が弾けて飛んできていたのだった。日本でも綿の栽培など目にしたことはない。綿のような雪…初めて綿花の飛ぶ光景を見て、「綿雪」というネーミングに改めて感心してしまった。
赤道直下のアフリカ大陸で雪に出合うことは大それた望みかというと、決してそうではない。偶然にも恵まれて本物の雪を目にしたことが一度だけある。スワヒリ語学校の週末休暇を利用して、インド洋に面したケニア第二の都市・モンバサのビーチに遊びに行った時のことである。夜行列車は500キロを13時間で走る。帰路、四国ほどの面積を持つツァボ・ナショナルパークを抜けた辺りで、列車は立ち往生した。アナウンスもない。動き出す気配もないままに3時間ほど経過した。早朝にナイロビに着き、そのまま学校に直行して授業を受けるつもりだった僕らは、遅刻の理由をあれこれ考えたりしていた。そのうちに夜が明けてきた。すると左後方に、朝焼けのキリマンジャロが浮かび上がってきた。僕らは歓声を上げた。その山頂に「雪」を望めたからだ。通常通りの運行なら漆黒の闇の彼方だったはず。昼間でもその山頂にはいつも雲がかかり、めったにお目にかかれないものと聞いていたからなおさら感激だった。